紙の歴史

  • 粘土板文書
  • パピルス
  • 甲骨
  • 木簡・竹簡
  • パーチメント(羊皮紙)
  • 紙の発明

紙の歴史

  西暦 紙および関連事項 西暦 日本および世界の出来事
紙以前の書写材料
  • [BC]
  • 3000頃
[メソポタミア]シュメール人、楔形文字を発明、粘土板に記録
  • [BC]
  • 5000頃
[中国]長江流域に稲作農耕文化確立
[エジプト]パピルス紙を発明、聖刻文字使用 2850頃 [エジプト]メネス王、上下エジプトを統一
1400頃 [中国]甲骨文字使用開始(殷) 2500頃 [インド]古代インダス文明起こる
1300頃 [中国]竹簡・木簡使用開始 1800頃 [メソポタミア]ハムラビ法典制定
200頃 [ペルガモン]パーチメント(羊皮紙)を発明 221 [中国]秦の始皇帝、中国統一[ローマ]ローマ帝国全盛期
製紙の始まり 176~141 [中国]甘粛省天水放馬灘から出土(1986)の紙(地図)は前漢時代のものと推定 149~46 [ローマ]第三次ポエニ戦争、カルタゴ滅亡
74~49 [中国]甘粛省敦煌懸泉遺跡から出土の紙に文字が書かれていた(敦煌懸泉紙) 30 [エジプト]クレオパトラとアントニウスの死により、エジプト王国滅亡
[AD]105 [中国]蔡倫、紙を発明(「後漢書」の記述) [AD]184 邪馬台国の卑弥呼、女王になる
300~600頃 [韓国]製紙法伝わる 375 ゲルマン民族大移動始まる
593 [中国]木版印刷法の発明 538 [日本]百済より仏教伝来
610 [日本]高句麗(北朝鮮)の僧、曇徴により、製紙法伝わる(推古18) 607 [日本]法隆寺創建(推古5)。小野妹子、隋へ派遣される
702 [日本]大宝2年の戸籍(日本最古の紙) 701 [日本]大宝律令完成(大宝元年)
704~751頃 [韓国]現存する最古の印刷物「陀羅尼経」(慶州・仏国寺) 710 [日本]平城京遷都(和銅3)
751 [サラセン]唐とサラセンによるタラス川の戦い。唐軍捕虜の中国人により、イスラム世界に製紙法伝わる 786 [西アジア]ハルン・アル・ラシッド即位、イスラム文化の黄金時代
793 [ペルシャ]ハグダットに製紙工場できる 794 [日本]平安京遷都(延暦13)
806~820 [中国]広東地方で竹を原料として紙を作る。透かし入りの紙「水紋紙」できる 874 [日本]「竹取物語」「伊勢物語」著される
960 [エジプト]カイロに製紙工場できる 995頃 [日本]清少納言「枕草子」
927 [日本]藤原忠平ら、延喜式を作る(日本初の製紙法の記述、延長5) 1001~05頃 [日本]紫式部「源氏物語」
1005 [中国]北宋真宗景徳2年、紙幣が発行される 1017 [日本]藤原道長、太政大臣となる(寛仁1)、藤原氏全盛
1100 [モロッコ]フェズに製紙工場できる 1096~99 第一回十字軍
ヨーロッパ製紙 1144 [スペイン]バレンシァ地方のハチバにヨーロッパ初の製紙工場できる 1147~49 第二回十字軍
1230 [韓国]銅活字による書籍印刷物刊行 1215 [イギリス]大憲章(マグナ=カルタ)制定
1276 [イタリア]ファブリアーノに製紙工場できる 1274 [日本]蒙古襲来(文永の役、文永11)
1282 [イタリア]ファブリアーノでウォーターマーク(透かし模様)が発明される 1299 [イタリア]マルコ・ポーロ「東方見聞録」
1348 [フランス]トロアに製紙法伝わる 1333 [日本]鎌倉幕府滅亡
1390 [ドイツ]ニュンベルグに製紙工場できる 1517 [ドイツ]ルターの宗教改革
1445頃 [ドイツ]グーテンベルク、活版印刷を発明 1600 [日本]関ヶ原の戦い
1670 [オランダ]ホランダービーター発明される 1690 [日本]ケンペル、長崎にくる。帰国後、和紙をヨーロッパに紹介
1719 [フランス]レオミュール、蜂の巣を見て木材から紙ができることを学会に提唱 1720 [日本]徳川吉宗、洋書の輸入を解禁
1765 [ドイツ]シェーファー、いろいろな植物体(木、草、蜂の巣、苔など)を原料として紙をつくる 1764 [イギリス]産業革命始まる
1789 [フランス]ベルトロー、塩素をパルプの漂白に用いる。この頃、ヨーロッパにおける製紙原料のぼろ不足が深刻化 1789 [フランス]フランス革命
近代製紙の始まり 1798 [フランス]ルイ・ロベール、長網抄紙機を発明 1798 [フランス]ナポレオンのエジプト遠征
1806 [イギリス]フォードリニヤー、長網抄紙機を実用化 1798 8 [日本]国東治兵衛「紙漉重宝記」出版(寛政10)日本最古の製紙技法書
1807 [ドイツ]イリッヒ、ロジン・サイズ(滲み止め)を発明。この頃、紙の填料として粘土(白土)が初めて使用される 1819 [日本]江戸の紙問屋49軒におよぶ(文政2)
1809 [イギリス]ディキンソン、円網抄紙機を発明 1823 [日本]シーボルト来日(文政6)
1820 [イギリス]クロンプトン、蒸気乾燥シリンダーを発明 1830 [フランス]七月革命
木材化学こうぎょうとしての製紙産業の始まり 1844 [ドイツ]ケラー、砕木パルプの発明 1840~42 [中国]アヘン戦争
1851 [イギリス]ワットとパルガス、木材を原料としたソーダパルプを発明 1853 [日本]アメリカ使節ペリー、浦賀に来る(寛永6)
1856 [イギリス]ハーレイ、初めてダンボールの特許を取得[アメリカ]ティルマンが亜硫酸パルプ(Ca法)を発明 1861 [アメリカ]南北戦争(~1865)
1872 [スエーデン]エクマンが亜硫酸パルプ(Mg法)を発明 1879 [日本]大阪朝日新聞発刊(明治12)
1874 [日本]有恒社で機械ずきの紙(洋紙)の製造を開始(明治7) 1879 [アメリカ]エジソン、白熱電灯発明
1884 [スエーデン]ダール、クラフトパルプを発明 1884 清仏戦争(~1885)
1889 [日本]王子製紙気田工場で亜硫酸パルプを製造(明治22) 1894 日清戦争(~1895)
1890 [日本]富士製紙入山瀬工場で砕木パルプを製造(明治23) 1904 日露戦争(~1905)
1903 [日本]洋紙・和紙の生産量伯仲(明治36) 1914 第一次世界大戦(~1918)
1925 [日本]富士製紙落合工場(現:サハリン)でクラフトパルプを製造(大正14) 1917 [ロシア]ロシア革命
1926 [アメリカ]林産試験場、ケミカルパルプ法を実用化 1927 [アメリカ]リンドバーグ、大西洋無着陸横断飛行
1948 [日本]パルプ及び紙技術協会(現:紙パルプ技術協会)設立(昭和22) 1939~45 第二次世界大戦
1950 [アメリカ]NY州立大学林産学部で丸太法ケミグランドパルプを発明。[スエーデン]カミヤ社は連続蒸解釜を開発 1950 朝鮮戦争
1952 [日本]王子製紙春日井工場でカミヤ式連続烝解釜の運転を開始(昭和27) 1953 [日本]テレビ放送開始
1954 [イギリス]セント・アンネ・ボード社、ツイン・ワイヤーマシンを開発 1956 [日本]国際連合加盟
1956 [アメリカ]グールド社はコールドソーダ法ケミグランドパルプの生産を開始 1957 [ソ連]世界最初の人工衛星打ち上げ
1959 [日本]広葉樹のクラフトライナー生産開始(世界初)(昭和34) 1962 キューバ危機
1960 [アメリカ]バウアー社、大型リファイナーの開発に成功。リファイナーグランドパルプ(RGP)の製造開始 1964 [日本]東京オリンピック開催
1965 [日本]廃材チップの輸入開始(昭和40) 1968 [日本]川端康成、ノーベル文学賞受賞
1966 [日本]世界最初の合成紙の製造開始(昭和41) 1969 [アメリカ]アポロ11号、月面着陸
1968 [スエーデン]デファイブレーター社、サーモメカニカルパルプ(TMP)を開発 1972 [日本]沖縄返還(昭和47)
1970 [日本]日本の紙生産量世界第二位となる(1297万トン)(昭和45) 1973 [日本]第一次オイルショック(昭和48)
1972 [日本・アメリカ]三井・クラウンツェルバッハ社、合成パルプの製造を開始(昭和47) 1975 ベトナム戦争終結
1975 [日本]酸素漂泊設備を導入(昭和50) 1978 [日本]第二次オイルショック(昭和53)
1977 [日本]キノン添加パルプ蒸解法の発明(昭和52) 1980 イラン・イラク戦争
1979 [スエーデン]ダンベラ社・モドセル社、加圧GPを開発 1986 [ソ連]チェルノブイリ原発事故
1984 [ドイツ]フォイト社、ツインワイヤーマシン幅9,450mm、生産量847t/24時間 1989 [日本]昭和天皇逝去(昭和64/平成1)[ドイツ]ベルリンの壁、撤廃
1998 [日本]王子製紙苫小牧工場のツインワイヤーマンマシン、一分間の抄紙速度1700メートル、日産720トンを記録 1991 [ソ連]ソビエト連邦崩壊

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紙(書写材料・製紙機械・製紙原料・加工技術等)

粘土板文書

人類最初の都市文明といわれるメソポタミア文明は、BC3500年頃に、チグリス・ユーフラテスのニ大河川流域に興った。そこでは商業活動・行政活動を記録するのに、その地域に豊富にある粘土が使われた。

湿っている土を練り固めて平らにし、これに葦の茎などを押し付けて楔形文字を書き付けた。
粘土板文書は、人類の最も古い文書である。
粘土板文書はそのままでも保存性は良いが、乾かしてから焼いたものは特に保存性にすぐれている。
欠点は重いこと、かさばること、大きな物は作りにくいことである。

パピルス

エジプト文明は、ナイル河流域に興った。ナイル河の岸辺には、高さ2、3m以上になるカヤツリグサ科の水草「パピルス」が繁茂していた。
古代エジプト人は、パピルスの茎を束ねて筏を作ったり、筵や敷物を作るなど、いろいろなものに加工して使っており、根は食用にした。

このパピルスから書写材料のパピルス紙を発明した。
これはエジプトで広く使われ、ギリシャ・ローマ時代にはエジプト王家の専売品であり、輸出され、 AD10世紀頃まで4000年もの期間、書写材料として使われた。
これにより、パピルスという言葉が多くのヨーロッパ語の「紙」の語源となっている(英語-paper、ドイツ語-papier、フランス語-papier、スペイン語-papel)。

パピルス紙は軽くて扱いやすく、丈夫で筆記しやすいのが特色である。また、書き損じは海綿で容易に消すことができるので広く使われた。
欠点は折り曲げに弱い、高価で作るのに手間がかかる、大きなものを作ることが困難なことなどである。
そのため製紙法が伝わるとともに作られなくなり、製紙法も忘れられたが、近年パピルス紙の製法が復元され、現在ではエジプト土産として作られ、容易に手に入る。

甲骨

殷の時代(BC1700~BC1100年頃)、王室では、占いにより神の指令(天命)を受けて政治を行った。
亀の甲羅(腹甲)や動物の肩甲骨などに穴をあけ、焼けぼっくいを押し付けることによって入るひび割れの形により吉凶を占い、その結果を彫り付けた。これが甲骨文である。
堅い甲羅や骨に、文字を彫り付けることは容易ではない。書写材料というより、記録材料であった。

木簡・竹簡

殷・周(BC1100年~BC770年頃)の時代から、木簡や竹簡が使われている。
竹簡は地中で腐りやすいので、あまり出土していない。
木簡・竹簡はBC1300年頃からAD105年、蔡倫が紙を発明するまで使われた。

木簡や竹簡はかさばること、重いことが欠点で、漢代の詔書や法令は、長さ69cm(3尺)、幅約1cm、厚さ2、3cmもあった。
木簡は日本でも、平城京跡から出土したことはよく知られている。
奈良時代、紙は貴重品であったので、紙が登場したあとも木簡が使われた。

パーチメント(羊皮紙)

パーチメントは、古くから書写材料として使われた。
BC1500年頃のものが、エジプトで出土している。また、1947年に死海北西で発見された「死海文書」も、パーチメントに書かれている。
羊の皮から作ったものをパーチメント(羊皮紙)、仔牛の皮から作ったものをベラム(仔牛皮紙)と呼んで区別しているが、一般にはこのふたつを併せてパーチメントと呼んでいる。

パーチメントは、羊や仔牛の生の皮を石灰水に浸け、毛をむしり取り、木の枠で拡げ、乾燥させ、半月形の小刀で表面を薄く剥ぎ取り、軽石の粉などで磨き、引き伸ばしながら乾燥させて作られた。

パーチメントは、丈夫で書きやすく、文字の訂正をする時は削ればよいので、最良の書写材料であった。
しかし、作るのに手間がかかり、高価なので製紙法が伝わった後は、大切な書類、条約書、卒業証書などのみに用いられた。

紙の発明

紙は中国で発明された。現在までに発見されている最も古い紙は、1986年、甘粛省天水市の放馬灘にある前漢の墓石から発見されたものであり、地図が描かれており、BC176~141年のものと推定されている。

中国の正史「後漢書」によると、「宮廷の用度品の長官である蔡倫は、心を尽くして麻布、麻のぼろ、魚網、樹皮から紙を作り、時の皇帝に褒められた。
それから後、専ら紙が用いられたので、人々は蔡倫の発明した紙を蔡候紙として褒め称えた」と記されている。

蔡倫以前より、紙が存在していたにもかかわらず、蔡倫が紙の発明者とされてきたのは、彼が製紙法を完成させた偉大な功労者であったことを認められたが故で、正史に記載されたのだといえよう。

藩吉星「中国製紙技術史」には、漢代の麻紙による製紙工程(推定図)が出ている。蔡倫が完成させた製紙法は、おそらくこのようなものと考えられる。

  1. 原料の麻のぼろなどを切り刻み、流水の中で洗う。
  2. 草や木片を燃やして灰を採り、桶の中に入れ、笊などで濾して灰汁を採る。
  3. 水洗いしたぼろ切れを灰汁で煮る。
  4. 石臼で搗く
  5. 繊維を水洗いする。
  6. 繊維を紙槽に入れ、かき混ぜて紙料液(原質)を作る。
  7. 木の枠に網を張った紙漉き器(紙模-しも-。浮き箕)を両手に持って紙料液の中に入れ、紙料を漉きあげる。
  8. 紙漉き器(紙模)ごと立て掛けて乾燥させる。
  9. 乾いたら、紙漉き器から紙を剥がしてでき上がり。

この工程は、現在の製紙の基本工程、「植物体から繊維を取り出す(パルプ化)→繊維を水の中で叩く(叩解)→漉きあげる(抄紙)→脱水・乾燥」と同じである。
以後、定評のある多くの紙が作られたが、機械抄きの近代製紙産業は、中華民国になるまで企業化されなかった。

※日刊工業新聞社刊小宮英俊氏著「トコトンやさしい紙の本」中の「世界の紙の歴史年表」及び、株式会社美術出版社刊「紙の大百科」中の小宮英俊氏著「紙の誕生とその歴史」から併せて引用させて頂きました。
日本及び世界の歴史の一部については、がんばれ凡人!を参照させていただきました。